Vol.3 背骨の役割②(神経保護)

支持性の他にもうひとつある背骨の役割は、脳から始まって手足に向かっている神経の通り道を確保して、これを守ることにあります(神経保護)。脊椎が縦に並んだ背骨(脊柱:せきちゅう)の中には、筒のようになった脊柱管という穴があります。この脊柱管の中には頭蓋骨の脳から続いている脊髄(せきずい)という神経の塊(かたまり)が通っています。この脊髄は脳と同じく手足の動きの細かい調整など複雑な働きをする神経の塊で、脳と同じく中枢神経(ちゅうすうしんけい)と呼ばれています。

図7.脳と脊髄

 

 

脊髄は頭蓋骨を出て、頸椎(けいつい)やその下の胸椎(きょうつい)の脊柱管の中を通り、腰椎(ようつい)との境界の辺りまで延びています。そして、その先の腰椎になると、神経の塊である脊髄はばらけて、たくさんの神経の筋(すじ)(神経線維:しんけいせんい)になります。手術のときに、脊柱管の中を覗くと、たくさんの神経がばらばらと髪の毛のようになって並んでいるのがわかります。この髪の毛のような状態を「馬の尻尾」に例えて、馬尾(ばび)と呼んでいます。馬尾は神経の塊ではありませんので、脳からの命令を、電気のコードのように、単純に伝えるだけの役割を果たしています。このように命令や刺激を直接伝達するだけの神経を,末梢神経(まっしょうしんけい)と呼んでいます。末梢神経は、複雑な調整機能を持つ脊髄や脳のような中枢神経よりも構造が単純になっています。

図8.脊髄と馬尾

 

脊髄(せきずい)が通っている頸椎でも脊髄から神経根(しんけいこん)という末梢神経が枝を出して、それぞれの頸椎から腕や手に、胸椎からは肋間神経(ろっかんしんけい)に、そして腰椎からは足に、命令を伝えています。

図9.脊髄と神経根

 

 

   図10.コンピュータとコード   

 

脳や脊髄といった中枢神経は複雑な働きをするコンピューターに、神経根や馬尾といった末梢神経はコンピューターにつながっている電気のコードに例えることができます。当然、末梢神経(電気のコード)は中枢神経(コンピューター)より丈夫です。コンピューター(中枢神経)は一度つぶれると、修理が効きにくいのですが、電気のコード(末梢神経)は丈夫であまりつぶれません。神経根が圧迫されて症状がでる神経根症(しんけいこんしょう)は、手術をしなくても治ることが多いのですが、脊髄が圧迫されておこる脊髄症(せきずいしょう)では、コンピューターがつぶれてしまうと取り返しがつかないので、早い時期に手術をして圧迫をとる必要があります。

 

 

第3回Debate on the Ringを開催いたしました

第3回Debate on the Ringは多くの方にご参加いただき、活発なDebateを行うことができました。

来年(2015年)も同時期に第4回Debate on the Ringを行いますので、是非、ご参加ください。

 

開催日:2014年2月15日(土) 14時~18時

開催場所:神戸ベイシェラトンホテル&タワーズ(六甲アイランド内)

 

内容:変性側弯を伴った腰部脊柱管狭窄症に対する治療戦略

 

第3回 Debate on the Ring チラシ

 

第8回市民講座を開催いたしました

第8回市民講座を11月24日(日)に多くの方にご参加いただき、開催いたしました。

第8回市民講座(表面)

第8回市民講座(裏面)

 

 

第7回市民講座を開催いたしました

第7回市民講座を2013年8月11日(日)、多くの方にご参加いただき、開催いたしました。

第7回市民講座チラシ-おもて

第7回市民講座チラシ-うら

 

 

Vol.2 背骨の役割①(支持性)

これまで書いてきましたように、背骨には身体を支えるという重要な役割(支持性:しじせい)があります。この支持性が壊れてしまうと、身体を支えにくくなって、色々な症状(腰痛など)が出てきます。図6に背骨の支持性が壊れた(こわれた)状態をレントゲン像やCT像で示します。

 

6.背骨の支持性が壊れた状態


a. 側弯(そくわん)

上の図は背骨を正面から見たレントゲン像ですが、通常は真っ直ぐであるはずの背骨が曲がっています(黄色の線)。この状態を側弯と呼びます。曲がった背骨のために身体を支えることが「しんどく」なり「だるく重たい」「痛み」が出てきます。

 

 


b.圧迫骨折(あっぱくこっせつ)

この図では、椎体が圧迫骨折(あっぱくこっせつ)のため、つぶれてしまっています(黄色矢印)。つぶれた椎体の中には黒く写っている空気が入りこんでペコペコになってしまっています。このため、身体を支えるという背骨の役割を果たすことができず、強い痛みや不安定感を感じるようになります。脊柱管にある神経が圧迫されて、足の麻痺が出てくることもあります。

 

c.すべり症
椎体が矢印のように左下の方向にずれて(すべって)います。このため、不安定になり、腰痛を強く感じるようになります。また、脊椎がずれますので、上下の脊柱管もずれて、ずれた部分で脊柱管は狭くなります。このため、中にある神経が圧迫されて足のしびれや痛みを感じるようになります。

 

 

Vol.1 背骨のかたち

人間の身体をまっすぐに立てるために背骨は 重要な役割を果たしています。つまり、背骨は 頭蓋骨を直接下から支えて、背中を通り、 腰から骨盤(こつばん)までを一本の棒のように なって支えています。
背骨はひとつひとつがバラバラの脊椎(せきつい)という骨でできています。頭蓋骨の下には首の脊椎(頸椎:けいつい)が7つ、その下には肋骨がついた背中の脊椎(胸椎:きょうつい)が12個、そしてさらに下にある腰の脊椎(腰椎:ようつい)が5つあります。5番目の腰椎の下には仙椎(せんつい)があって、この仙椎は骨盤(こつばん)の一部になっています。

 

図1.頭蓋骨や身体を支える背骨       図2.頸椎、胸椎、腰椎、仙椎

                  

 

 

ひとつひとつの脊椎は、図3aのように南京錠のような形をしています。南京錠の鍵の本体が脊椎の椎体(ついたい)、鍵の腕にあたるところが椎弓(ついきゅう)です(図3b)。たくさんの脊椎が頭から骨盤まで縦に並びますので、椎弓に囲まれた穴が筒のようになります。これを脊柱管(せきちゅうかん)と呼びます(図3c)。

 

図3.南京錠(a)、脊椎(頸椎)(b)、脊柱管(c)
 a.南京錠             b.脊椎(頸椎)    c.脊柱管(矢印)

 

 

 

 

図4a.靭帯、椎間板

脊椎はそれぞれが縦に並んで「柱」のようになりますので、脊柱(せきちゅう)と呼びます(全体を表す言葉ですので、「背骨」と呼んでもかまいません)。それぞれの脊椎は、ぐらぐらにならないように、靭帯(じんたい)という「すじ」(お互いを貼ってつなげるセロテープのようなものだと思って下さい)や椎間板(ついかんばん)という軟骨でつなげられています。左の図は脊椎どうしをつないでいる靭帯と椎間板を描いています。図の左側が「お腹側(前)」で、右側が「背中側(後ろ)」です。上下の脊椎の椎体はそのお腹側(前の方)が「縦靭帯:ぜんじゅうじんたい」というセロテープで、背中側(後ろの方)が「縦靭帯:こうじゅうじんたい」というセロテープでつなげられています。

 

 

4b. 後縦靭帯骨化症

「後縦靭帯骨化症:こうじゅうじんたいこっかしょう、OPLL」 という病気では、この「後縦靭帯」が「骨化(こっか):靭帯が骨に変ること」して、大きく膨らんできます。後縦靭帯は椎体の後ろで脊柱管の中にありますので、それが骨になって膨らむと、脊柱管が狭くなります。図で赤い部分が骨化した(骨になって膨らんだ)後縦靭帯で、青い部分が赤い部分に押されて狭くなった脊柱管です。脊柱管がこのように狭くなると、中にある神経が圧迫されて症状が出てきます。

 

 

椎間板は板状の軟骨で、上下の椎体をつないで、体重など背骨にかかる圧力を逃がす役割を果たしています(図4a)。椎間板は2重になっていて、体重などの力をよりうまく逃がせるようになっています。椎間板の中央にはゼリー状の柔らかい髄核(ずいかく)があり、その周りを線維輪(せんいりん)という硬い軟骨が被っています(図5)。ちょうど、アンコ(髄核)の入った「おまんじゅう」のようで、まんじゅうの皮が線維輪ということになります。ヘルニアでは、この中のアンコ(髄核)が外へ、脊柱管(せきちゅうかん)へ飛び出して症状が出ます。

5. 椎間板(髄核:ずいかく、線維輪:せんいりん)、まんじゅう(写真下)

 

せぼねの豆知識<目次>

第6回市民講座を開催いたしました

第6回市民講座を2013年5月19日(日)、多くの方にご参加いただき、開催いたしました。

第6回市民講座チラシ(表)

第6回市民講座チラシ(裏)

 

 

第5回市民講座を開催いたしました

第5回市民講座を2013年2月24日(日)、多くの方にご参加いただき、開催いたしました。

第5回市民講座チラシ-おもて

第5回市民講座チラシ-うら

 

 

第4回市民講座を開催いたしました

第4回市民講座を2012年11月23日(日)、多くの方にご参加いただき、開催いたしました。

第4回市民講座チラシ(表)

第4回市民講座チラシ(裏)

 

第3回市民講座を開催いたしました

第3回市民講座を2012年7月29日(日)、多くの方にご参加いただき開催いたしました。

第3回市民講座チラシ(表)

第3回市民講座チラシ(裏)